構想を動かす2人のリーダー
― 取材日:2025年5月22日 取材・執筆:
地域連携ジャーナル編集部・大塚 薫(おおつか かおる)
奄美大島――
日本とアジア、そして未来をつなぐ可能性を秘めた島
この地に今、政策レベルの構想力と地域現場での実行力を併せ持つ実務家パートナーが、静かに奄美に降り立とうとしています。
本稿で紹介するのは、奄美国際人材・観光創生機構の
「代表理事:管 沙織 氏」と「副理事長:加藤 洋司 氏」
この二人の関係性は、単なる組織内の役職を超えた実績と信頼で結ばれた本質的な協働です。
実は両氏は、日本における外国人就労制度の草創期から制度づくりに携わってきた専門家同士。
加藤 洋司氏は一般社団法人 東京都外国人就労認定機構の初代代表理事(現・名誉理事長)として、その制度設計と運営を最前線で支えてきた人物です。
そして、管 沙織氏はその後を継ぎ、現在は同機構の第3代目代表理事(現職)として、全国の外国人材受け入れ・定着支援を推進する中心的な存在。
まさに、制度創設者と継承者が共に動く、日本の外国人就労制度における“中枢ペア”なのです。
以下では、実際の取材を通じて見えた両氏の人物像と、奄美に込めた想いを紐解いていきます。
代表理事
管 沙織(すが さおり)
|父のまなざしを受け継ぎ、人と社会をしなやかにつなぐリーダー
管 沙織 氏は、20年以上にわたり外国人材支援の最前線で走り続けてきた実務家です。
株式会社リンクオールデザイン代表取締役として、アジア各国の学校法人と連携し、長期間にわたり年間200名以上の外国人材を日本に送り出してきました。
送り出すだけでなく、来日後の就労・生活・定着支援を含めた一貫したサポート体制を構築し、企業や教育機関、行政からも高い評価を得ています。
現在は、インドネシアでの教育機関設立にも着手し、
「教育 × 雇用 × 地域定着」を軸とした国際人材育成の新たなモデルを実践構築中です。
制度設計と現場支援を横断する実務家として、アジアと日本をつなぐ、独自の「共創モデル」を築き上げつつあります。
特に注目すべきは、企業・教育機関・自治体と連携した共創パートナー制度の推進です。
東京スカイツリーの建設を手がけた鉄鋼大手との人材育成支援、
都内屈指の老舗日本語学校との三位一体型就労プログラム、
きらぼし銀行グループ「きらぼしコンサルティング」との地域経済連携型プロジェクトなど、
管氏のその現場対応力と調整力は、実際に複数の連携プロジェクトを成功に導いており、“人と仕組みを動かす存在”として広く認知されています。
そんな彼女が、2025年春、初めて奄美大島を訪れました。
きっかけは、写真家だった父・管洋志氏の十三回忌。
生前、奄美を愛し、幾度も島に通っては風景と人々をカメラに収めた父のまなざし。
その記憶を追い、彼女は自身の人生と仕事を重ね合わせるように、この島に足を踏み入れました。
「父を知ってくださっている方々が島にいらっしゃると聞いたとき、胸が熱くなりました。」
「そのご縁を、今度は自分の人生と仕事でつなぎ直したいと強く思ったのです。」
約2週間の滞在の中で、彼女の心を動かしたのは、奄美の空気、人のあたたかさ、
そして言葉にならない“可能性”でした。
「ここから、島の力を世界に届ける新しい挑戦を始める」
―― そう強く誓い、管氏は奄美を次なる舞台として選びました。
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奄美を起点に、日本とアジアを繋ぎ直す――
この挑戦の旗を、彼女は静かに、そして強く掲げました。
その構想は、制度と現場を一体で捉え、人と地域がともに自立し、支え合う新たな循環をつくり出すこと。
単なる「人材の送り出し」ではなく、“地域に根づく未来をデザインする”壮大な挑戦です。
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【奄美から始まる、新たな地域共生モデル】
- 外国人材と島の未来をつなぐ、離島型起業支援スキーム
・離島創業補助金とビザ制度を組み合わせ、アジアの若者が奄美で起業できる環境を整備。
・事業アイデアの育成から、地域との協業、生活支援までを一気通貫で支援。
- 若手・地域住民の“自ら仕事をつくる”支援
・就職支援にとどまらず、特産品・観光・文化資源を活かした独自事業の創出を後押し。
・外国人材との協業による多言語観光や輸出支援プロジェクトも進行中。
- 離島ならではの“教育 × 実務”の連携モデル
・海外のパートナー校と連携し、来日前から日本語教育と企業マッチングを実施。
・奄美を「実践型人材育成キャンパス」として位置づけ、企業・教育・自治体が三位一体で支える体制を構築。
- 多文化共生を支える、地域コミュニティの再設計
・「生活ガイド」「多言語相談窓口」「外国人版地域おこし協力隊」など、受け入れ体制を制度的に整備。
・高齢者・子ども世代とつながる“異世代・異文化交流拠点”の設立も視野に。
- 公益法人化を視野に入れた、持続可能な運営基盤の構築
・奄美に遺贈や寄附が循環する仕組みを整備。島外の支援者や企業とも連携し、次世代へ想いを引き継ぐ法人体制へ。
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人を迎えることで、地域が変わる。
地域が変わることで、人の未来も変わる。
管沙織氏が描くビジョンは、
そのすべてを奄美から、静かに、そして着実に動き出しています。
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副理事長
加藤 洋司(かとう ひろし)
|制度と信用で地域を動かす、構想力の実践者
加藤洋司氏は、奄美国際人材・観光創生機構の骨格――
構想、制度設計、運営スキーム――
奄美プロジェクトのすべてを一人で設計した人物です。
落ち着いた語り口と誠実な姿勢の奥に、誰よりも先を見通す構想力と、制度と現場を結びつける実行力を兼ね備えています。
彼は、一般社団法人 東京都外国人就労認定機構の創設代表理事(現・名誉理事長)として、日本初の外国人雇用資格試験「外国人雇用管理士」制度を構想・立ち上げ、全国の企業や自治体が信頼を寄せる制度モデルを構築してきました。
この制度は単なる資格制度ではなく、外国人雇用に関する知識・法令・現場理解を統合し、日本社会が初めて外国人就労者と「制度的に向き合う」きっかけとなった仕組みです。
「制度は“現場に届く仕組み”でなければならない」
加藤氏の一貫した思想は、現実に根ざした制度設計の姿勢として各方面に伝わっています。
その一方で、加藤氏は実業家としても卓越した実行力を発揮しています。
現在、茨城県水戸市にて旧高等学校の跡地を活用した、地域の未来をかたちにする都市住宅開発プロジェクトを個人で統括。
構想から土地取得、資金調達、行政調整、設計・施工に至るまで、そのすべてを自ら主導しています。
本来であれば、大手企業や行政が関与する中規模都市開発に匹敵するこのプロジェクトを、一個人で遂行してしまう。
それこそが、加藤氏という稀有な実践者の真骨頂です。
その背後には、金融機関や行政から寄せられる、
個人としては極めて異例な「厚い信頼」が存在しています。
そんな加藤氏が奄美大島において描くのは「地域社会を構造から変える設計図」です。
地域創生・多文化共生・人材支援といったテーマに対し、情熱やスローガンではなく、“社会を動かすための構造”として仕組みを設計。
制度と経済を切り離すことなく、地域に根差した持続可能な実行モデルとして、その構想はいま、着実に具現化されつつあります。
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【加藤氏が設計する、制度が動く奄美の未来】
- 離島特性を活かした「人材定着と雇用循環モデル」
・若年層や地域住民、移住・定住希望者を対象に、「地域内人材循環」を制度設計から構築。
・特定技能や起業制度なども活用し、日本人・外国人を問わず“地域で働き、暮らす人”が継続的に根づく仕組みを整備。
- 多様な人材と共創する地域産業・観光プロジェクトの創出
・奄美の自然・文化・特産を活かした地域ビジネスに、地域内外の人材が役割を持って参画できる体制を構築。
・住民・移住者・企業・学生など、立場を越えて「地域の担い手」を育てる仕掛けを推進。
- 起業支援と資金調達を両立するスキームの設計
・地元若者、日本人のUターン人材、海外出身者を含む創業希望者に向けた、実効性のある創業支援制度を整備。
・地域金融機関との協働によって“資金の流れ”と“信頼ネットワーク”を可視化し、挑戦者が孤立しない地域経済基盤を形成。
- 公益法人化と“信頼で運営する地域プラットフォーム”へ
・将来的な公益法人化を見据え、地域の声を反映しながら、寄附・基金・協賛によって支える“信頼の循環”を制度化。
・地域内外の人が関われる、開かれた法人運営のあり方を追求。
- 地域から国、そしてアジアへとつながる制度モデルの発信拠点化
・奄美での実践を「地域再生 × 制度デザイン × 多様な人材活用」のモデルケースとして確立。
・教育・政策・経済を横断し、日本国内外の地域やアジア諸国との連携・波及を見据えた“制度の輸出”を構想。
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構想とは社会を設計する技術。
制度は、未来の土台となるべきもの。
加藤洋司氏は、言葉ではなく、仕組みで地域を変える人。
奄美に“制度が根づく未来”を設計する挑戦は、すでに静かに、しかし確実に始まっています。
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編集後記
取材を通じて浮かび上がったのは、「これは偶然の組み合わせではない」という確信でした。
全国規模の制度構築を担ってきた 加藤 洋司 氏と、現場の第一線で支援と設計を積み重ねてきた 管 沙織 氏。
この二人が、奄美という“可能性の島”で再び交わるということには、深い意味があると感じました。
制度の論理と現場の情熱。構想の力と、実務の確かさ。
それぞれの強みを持ち寄りながら、互いの違いを“補完”ではなく“共鳴”として捉え合うその姿勢。
それは、単なる役職の重みではなく、時間と覚悟の中で培われた「本物のパートナーシップ」に見えました。
取材の中で、沙織氏はこう語ってくれました。
「父は日本やアジアの原点が奄美にあると捉えていたようです」
島内各所を巡り、人々と触れ合うなかで、写真家だった父・洋志氏の言葉の“答え合わせ”をしているような感覚になることが幾度となくあったといいます。
その言葉に触れたとき、沙織氏の歩みと、このプロジェクトには、時間を超えて受け継がれていく想いが宿っているのだと、心を打たれました。
彼らが今、奄美で挑もうとしているのは、「制度で人を動かす」のではなく、「人の動きに制度が応える社会」をつくること。
そしてそれは、遠い未来の理想論ではなく、すでに形になりはじめている“手が届く構想”でした。
この場所から始まる挑戦が、全国の地域にとってのひとつの灯火になる――
そんな予感とともに、私は帰路につきました。
地域を想い、制度を越えて動く人たちの姿に、心からエールを送りたくなる。そんな取材でした。
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執筆者プロフィール
大塚 薫(おおつか かおる)
地域連携ジャーナル編集部所属。東京生まれ・地方育ち。
都市と地方、制度と現場、人と人の“ちょうど真ん中”を見つめるスタンスで、全国の地域プロジェクトやソーシャルビジネスを取材。
「取材先で人に出会い直す」がモットー。
温泉と黒糖焼酎をこよなく愛する。
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関連情報(リンク)
■管沙織 公式サイト:https://linkall.holdgs.com
・管 沙織 氏 FACEBOOKページ:
https://www.facebook.com/saorisuga.s
・株式会社リンクオールデザイン 代表取締役
・一般社団法人東京都外国人就労認定機構 代表理事
・一般社団法人奄美国際人材・観光創生機構 代表理事
■加藤洋司 公式サイト:https://holdgs.com
・加藤 洋司 氏 FACEBOOKページ:
https://www.facebook.com/kato.nre
・ギャランティ・インベストメント株式会社 代表取締役
・合同会社全国ポートサービス 代表執行役員社長
・一般社団法人東京都外国人就労認定機構 名誉理事長
・一般社団法人奄美国際人材・観光創生機構 副理事長
■東京都外国人就労認定機構:
https://togairou.or.jp
■奄美国際人材・観光創生機構:
https://amami-global.org
■南海日日新聞記事: Yahoo!ニュース掲載ページ:https://news.yahoo.co.jp/articles/f7a6eedea4dbfae1876d6f5a2b70184cb3be9ad3